NIPTは次世代シークセンサーを使って、DNAの配列を読みダウン症を含めたトリソミーや細かい欠失(微小欠失)を検出します。その際にその読み込みの深さが重要になります。この深さとは何回同じ場所を読むのかということです。母体の中にある胎児由来のDNAは細切れになっているのでそこから正確に読むには同じ位置の塩基配列を何度も読んでそのDNAの内容(塩基)が正しいのか判断しています。繰り返し読むことができれば、より正確に読むことができます。
参考までに通常その深さは30回以上が良いとされています。日本には大きく分けて3つのNIPT検査があります。
A | B | C | |
種類 | 国内検査 (VeriseqV2) | 国内検査 (Medicover式) | 国外検査 (VeriseqV2+微小欠失) |
検査会社 | GeneTech 日本遺伝子医学 東京衛生検査所 | 東京衛生検査所 | イルミナ株式会社 (カリフォルニア) |
読み込み深度 | 0.3倍 | 100倍 | 3倍 |
微小欠失検査 | ❌ | ⭕️ 4種類 | ⭕️ 5種類 |
必要な血漿(ml) | 1 | 4 | 1 |
読み込み範囲 | 全領域 | 必要な領域のみ | 全領域 |
扱う染色体 | 全染色体 | 必要部位のみ | 全染色体 |
シークエンス回数 | 1回 | 1回 | 2回 |
AとCの検査は検査場所が異なっても基本的に同じ手法を使っています。いずれもイルミナ式です。ただ、Cでは微小欠失を調べるために2回シークセンサーを基本的に回しています。イルミナ式は全染色体を読む方式を取っています。もともと全ての領域を調べるために読み込み深度は最大で3倍程度しか読むことができないため、(2回シークセンスしても)微小欠失の検出が苦手です。精神発達遅滞2番目に多いディジョージの検出が難しいです。ディジョージ症候群(指定難病203)の詳細はこちらをお読みください。また、使っている血漿も1mlなので、検査にかけるDNA量が少ないのもその原因です。Cの検査は2回シークエンスをかける際に検体数を減らして(通常48なのですが最大14までに減らす)再解析をしています。同じ検体数で行うと最大0.3X2=0.6倍にしかなりません。ここで3倍と行っているのは48検体あるものを4検体に減らして行なったという条件で初めて3倍が達成できるのですが、そんなことは採算度外視になるので行われていません。
一方Medicover方式は必要な部分のみを読んでいくので最大100倍を超える深度で読むことができます。必要な部位しか読みません。なので全染色体の異数性はわかりません。深く読むために胎児のDNAと両親のDNAの違いを認識できるためより正確に検査を行うことができます。もっとも関係する点はFF(Fetal fraction)です。胎児のcfDNAが母体のcfDNA何割を占めているかは最も重要です。この数値が1%でもずれると正しく計測をすることができません。13、18、21のトリソミーのように大きな変化を捉えるのであれば十分ですが、多くのディジョージ症候群では3Mb以下の欠失になってくるので、浅い深度の検査では正しく結果が出ません。ちなみに21番染色体は48.1Mbあります。このサイズの大きさになれば浅い深度でも読むことが可能です。
イルミナ社に海外検査を出している方で
FFが10%未満の人はディジョージ症候群の検出ができていない可能性が高い。
偽陰性の可能性があります。(生まれてきてディジョージだったのに、陰性と結果が出ている)
ということを再度お伝えしておきます。詳しくはこちらをお読みください。