どの検査方式も同じだとおもっていませんか?
微小欠失症候群でもっとも有名な疾患といえばDi George(ディジョージ)症候群だと思います。微小欠失症候群の中で一番頻度が高いこと、ダウン症に次いで染色体異常疾患の中で2番目に多い疾患であるためです。四千人に一人の確率で発症すると言われており、心臓血管形成異常、精神発達遅滞などを合併します。この疾患は22番染色体の一部が欠損するために起こります。ほとんどのケースでは両親の遺伝子異常というよりは、自然発生的に生じるため、予測は難しいです。NIPT検査でこの疾患の検出をできることは知られていますが、今回その解像度を比較します。
大きく分けて2種類の検査が日本には存在します。イルミナ式とメディカバー式です。イルミナ式はベリナタVerinata(カリフォルニア州)で行なっている検査です。現在国内検査はメディカバー式しかありません。補足ですが、産婦人科学会もイルミナ式を使ってこの検査を始めたいと考えています。しかしながら自らのルールによって現在までのところ、21, 18, 13番染色体トリソミーしかできません。いわゆる認証施設では検査ができないということです。
Illumina式(海外輸送も含む) | Medicvover式 | |
検出可能範囲 | 1.4Mb-2.6Mb | 0.75Mbまで検出可能 |
Mbとは100万塩基という意味です。人間は30億塩基の配列(遺伝子の単位が30億あるということです)のうち22番染色体の特定の位置が300万塩基(3Mb)ほど欠損するとDi George症候群になるのです。それは偶然にして起こります。ほとんど場合ランダムに起こります。3Mbがこの疾患の平均なのですが、それより小さいケースでも発症します。最小は0.5Mと言われています。0.5M程度になると欠損していても症状が出ないことがあります。
どこまで細かく調べられるかが、重要です。イルミナ式の場合には1.4Mbまでと謳っているのでおそらく、そこまでしか見ることができないでしょう。私が調べた限りでは、現在までのところメディカバー式が最も細かく調べることができます。なぜなら、メディカバー式では全染色体(1番から22番および性染色体)領域を計測しておらず、調べたいところのみを調べることができるからです。シークセンサーに調べたい場所のみを深く調べさせているのです。メディカバー式は、血液量もイルミナ式の4倍(血漿4ML)必要になります。そのため、Di Geroge症候群のように22番染色体の特定の位置だけを細かく見ることができるわけです。また、メディカバーは正式には謳っていないのですが、22番の同部位の微小重複も検出することができます。同じ場所を調べているので、欠損だけでなく重複も異常として検出してきます。22番染色体微小重複も有名な疾患の一つです。
一方イルミナ式は全染色体の全領域を調べるので、全染色体の部分欠失、部分重複も調べることができます。検出精度は7Mbまでなのですが、全領域をくまなく検査できるのでとても良い検査です。微小欠失は特定の場所だけなのですが、全領域の部分欠失、部分重複となるとさまざまな疾患が検出できます。