WAGR症候群

公開日:2024.09.17

11番染色体のp13領域が欠損することによって生じる疾患です具体的には、11p13と呼ばれる11番染色体の短腕の領域にある遺伝子の一部が欠失しています。この領域には、WT1遺伝子(Wilms腫瘍に関連)とPAX6遺伝子(無虹彩などの目の異常に関連)が含まれており、これらの欠失がWAGR症候群の主要な特徴を引き起こします。7M以上の欠失であれば部分欠失の検査で陽性にでます。ただ、この領域は比較的小さいのでこの場所のみが欠失している場合には検出が難しいかもしれません。

11p13領域の欠失サイズ

欠失のサイズ(つまり、何メガベースが欠失しているか)は個人によって異なることがあり、欠失範囲が広いほど症状が重くなる可能性があります。一般的に、11番染色体の短腕(11p13)の欠失は、1〜10メガベース(Mb)に及ぶことが多いとされています。

具体的な欠失範囲

  • WAGR症候群に関連する典型的な欠失範囲は、WT1遺伝子からPAX6遺伝子に及ぶ領域で、欠失の大きさは通常約1Mb(1メガベース、1M塩基対)から数Mb(数百万塩基対)に及びます。
  • ただし、個々の症例によって欠失の範囲は異なることがあり、一部の患者ではより広範囲にわたる欠失が見られることもあります。

欠失の影響

欠失が広がる領域が大きいほど、WT1やPAX6以外の遺伝子も含まれる可能性があり、その結果、症状がより重くなることがあります。例えば、知的障害の重症度やその他の発達障害のリスクが増すことがあります。。

WAGR症候群は、まれな遺伝性疾患であり、Wilms腫瘍(腎臓がん)無虹彩(虹彩が欠けている状態)生殖器および泌尿器の異常、および知的障害の4つの特徴から名前が付けられています。WAGR症候群のそれぞれの文字は、これらの症状に対応しています:

  • WWilms腫瘍(腎臓の小児がん)
  • AAniridia(無虹彩)
  • GGenitourinary anomalies(生殖器および泌尿器の異常)
  • RRetardation(知的障害)

1. WAGR症候群の原因

WAGR症候群は、第11染色体にある遺伝子の一部が欠失することによって引き起こされます。特に、WT1PAX6という遺伝子が関係しています。これらの遺伝子は、腎臓、目、泌尿器系、および脳の発達に重要な役割を果たしており、これらの遺伝子の欠失がWAGR症候群に関連する様々な症状を引き起こします。

  • WT1遺伝子:主に腎臓や生殖器の発達に関わり、欠失するとWilms腫瘍や泌尿器・生殖器の異常のリスクが高まります。
  • PAX6遺伝子:目の発達に関与しており、この遺伝子が欠けていると無虹彩などの目の異常が生じます。

2. WAGR症候群の主な特徴

WAGR症候群は、名前の通り、複数の症状が現れる多系統疾患です。以下がその主な特徴です。

(1) Wilms腫瘍

  • Wilms腫瘍は、腎臓にできる小児がんで、WAGR症候群の子供は、この腫瘍を発症するリスクが非常に高いです。通常、5歳未満で発症することが多いです。

(2) 無虹彩(Aniridia)

  • 無虹彩は、目の虹彩(瞳孔を取り囲む色のついた部分)が欠けている状態です。これにより、視覚の問題や光に対する過敏症が生じます。

(3) 生殖器および泌尿器の異常

  • 男児では、停留精巣(精巣が陰嚢内に降りてこない状態)や尿道の異常が見られることがあります。女児では、外性器の異常が見られる場合があります。

(4) 知的障害

  • 知的障害は、学習や認知機能に影響を与え、発達の遅れが見られることがあります。知的障害の程度は個人によって異なりますが、軽度から中等度の障害が一般的です。

3. その他の特徴

  • WAGR症候群の人々は、他にもさまざまな健康問題を抱えることがあります。例えば、肥満、てんかん、行動上の問題(自閉症スペクトラム障害など)、および感覚障害(聴覚や視覚)を経験することがあります。

4. 診断

WAGR症候群の診断は、臨床的な特徴を確認した上で、遺伝子検査を行うことで確定します。通常、染色体マイクロアレイ解析FISH(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)などの技術を用いて、11番染色体の欠失があるかどうかを調べます。

5. 治療と管理

WAGR症候群に対する治療は、症状ごとに異なり、早期診断と継続的な管理が重要です。

  • Wilms腫瘍:定期的な腎臓のエコー検査などで早期発見を目指し、腫瘍が見つかった場合は、手術、化学療法、放射線療法が行われます。
  • 無虹彩:視覚障害に対する治療として、メガネやコンタクトレンズ、または手術が行われることがあります。
  • 生殖器・泌尿器の異常:泌尿器科や小児外科での手術が必要な場合があります。
  • 知的障害:発達支援や特別教育プログラム、リハビリテーションが提供されます。

6. 予後

WAGR症候群の予後は、個々の症状やその重症度に依存します。特に、Wilms腫瘍の早期発見と治療が予後に大きく影響を与えるため、腎臓の定期検査が重要です。視覚障害や知的障害がある場合は、それに応じた治療やサポートが必要です。

まとめ

WAGR症候群は、腎臓、目、生殖器、知的発達に影響を与える遺伝性疾患です。11番染色体の遺伝子の一部が欠失することが原因で、早期の診断と継続的な管理が重要です。定期的な検査と適切な治療を行うことで、健康状態の維持や症状の改善が期待できます。

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